当研究室の主な研究テーマは,「在宅高齢者のリハビリテーションにおける主観的QOLと物理的・社会的環境の視点からのアウトカム」(研究1)と「回復期リハビリテーションにおける個人因子アプローチの効果」(研究2)です.
研究1では,平成17-18年度科学研究費補助金(課題番号17700452)の支援を受け,包括的環境要因調査票CEQを開発し, 財団法人フランスベッド・メディカルホームケア研究・助成財団平成19年度研究助成と平成20-21年度科学研究費補助金(課題番号20700434)の支援を受けて,包括的環境支援プログラムを作成しました.現在はCEQを用いた作業療法の効果を検討するために,平成22年度社団法人日本作業療法士協会課題研究助成制度の支援を受け,籔脇准教授と臨床のセラピストと共同で介入研究を実施しています.
研究2では,回復期リハビリテーション病棟に入院した高齢者に対する個人因子アプローチの重要性に着目し,在宅生活への影響や作業療法のリーズニングについて,籔脇准教授が大学院生やゼミ生と協力して研究に取り組んでいます.なお,研究1では,研究協力者を募集しております.研究内容にご関心がある方は,研究協力者募集をご覧下さい.
修士論文中間発表会の様子 |
大学院では,リハビリテーション援助特論Ⅲ・Ⅳ,同演習,応用作業療法学特論,同演習(通信制),特別研究を開講し,2名の学生が修士論文の作成に取り組んでいます.
M2(通信制)森元さんは,大規模な回復期リハビリテーション専門病院に勤務するかたわら,日々の臨床で多く経験する脳卒中片麻痺患者を対象とした研究に取り組んでいます.研究テーマは入院中の転倒リスクと退院後の作業遂行との関連を追跡調査によって明らかにすることです.現在はデータ収集中で,蓄積された多様な情報を効果的に分析するための手法を検討しているところです.
M1(通信制)横山さんは,公立総合病院で回復期リハビリテーション病棟専従の作業療法士として勤務しながら,大腿骨頚部骨折患者を対象とした心理社会的アプローチに関する研究に取り組んでいます.具体的な研究テーマは文献レビューを通して検討していきますが,整形外科疾患に作業療法士が関わることの利点を明確にできるような研究デザインを組む予定です.
SkypeTMを用いた研究指導 |
なお,当研究室では大学院生(修士・博士・通信修士)を募集しております.入試要項は,こちらをご参照下さい.進学をお考えの方は,お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします.
臨床施設や教育機関に在籍しながらの進学も歓迎いたします.定期的な通学が困難な方,岡山県外にお住まいの方であっても,インターネットを有効に活用した研究指導が可能です.
学生の環境や研究テーマに応じて,柔軟に支援しますので,関心のある方は気軽にお問い合わせ下さい.
氏名 | 論文名 | 公開情報 | ||
---|---|---|---|---|
修士課程 | 2010年度修了 | 黒川華代 | 高齢者支援に必要なその人らしさについての因子構造-介護老人保健施設における専門職の認識による検討(→要旨) | Disability and Rehabilitation |
2011年度修了(通信) | 森元大樹 | 回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の転倒リスクが在宅生活での作業遂行と健康関連QOLに及ぼす影響(→要旨) | - | |
2012年度修了(通信) | 横山奈央子 | 慢性疼痛患者の健康関連QOLに対する作業に焦点を当てた実践の効果-シングルシステムデザインによる検討(→要旨) | 作業行動研究 | |
2013年度修了(通信) | 鹿田将隆 | 通所介護を利用して生活を送る高齢者が作業同一性を構築するプロセス(→要旨) | OTジャーナル | |
2014年度修了(通信) | 市田博子 | 地域生活を送る慢性呼吸器疾患患者の作業参加が健康関連QOLに与える影響(→要旨) | - | |
南庄一郎 | 不安の高い統合失調症男性患者の自炊生活実現が阻害される心理的プロセス(→要旨) | - | ||
吉田一平 | 高齢者の挑戦水準・能力水準バランスを調整した作業療法がQOLに与える効果-フローモデルを基にした研究(→要旨) | 作業療法 American Journal of Occupational Therapy |
||
2015年度修了(通信) | 最相伸彦 | 要介護高齢者と家族介護者の作業参加の相互関係性および健康関連QOLと介護負担感に及ぼす影響(→要旨) | - | |
中原啓太 | 健常高齢者の作業参加・環境要因・運動量が健康関連QOLに及ぼす影響(→要旨) | 作業療法 | ||
2016年度修了(通信) | 鈴木渉 | 作業療法で用いられる理論と実践手法に関する教育が卒後の職業的アイデンティティに及ぼす影響(→要旨) | 作業療法 | |
佐野裕和 | 地域在住要介護高齢者を取り巻く環境が役割遂行に与える影響(→要旨) | 作業療法 | ||
2020年度修了(通信) | 伊藤竜司 | 地域在住高齢者の作業参加と環境要因,抑うつ,健康関連QOLの相互関係-軽度認知障害者と健常者間の多母集団同時分析による比較検討(→要旨) | - | |
博士課程 | 2014年度修了 | 小野健一 | 認知症高齢者の家族介護者に対する共作業支援尺度の開発(→要旨) | 老年精医誌 J Gerontol Geriatr Res Br J Occup Ther |
14期生ゼミの一場面(輪読会) |
作業療法学科の学生は,3年次より各教員のゼミに配属されます.学生は毎週定期的に開催されるゼミに参加し,研究テーマに関連した文献の輪読や研究論文のレビューを行い,研究計画書を作成してデータ収集を行います.最終的には4年次秋期に作業療法学研究法演習として,グループで研究論文を作成します.
これまでのゼミ生の研究テーマは以下の通りですが,毎週研究室や演習室で和やかに,時には白熱したディスカッションが繰り広げられています.
メンバー | テーマ | 形式 | |
---|---|---|---|
12期生 (10年3月卒) |
志方,田中,寺西,中西,服部 | 中山間地域に住む高齢者のQOLと地域の人と関わることとの関連 | インタビュー |
宇山,田辺,三木 | 在宅認知症高齢者に対する家族介護者のコミュニケーション方法の検討 | アンケート | |
13期生 (11年3月卒) |
太田,小村,高山,星野,山内 | サービス利用初期における高齢者との信頼関係を築くための関わり方の検討 | インタビュー |
14期生 (12年3月卒) |
北村,小西,晝田,福原,宮田 | 回復期リハビリテーションにおける対象者のその人らしさを引き出す方法-作業療法士の戦略 | インタビュー |
15期生 (13年3月卒) |
大代,佐伯,坂野,竹内,谷岡,中桐,山端 | 通所介護を利用する高齢者の意志と作業歴の関連についての検討 | 観察評価 |
16期生 (14年3月卒) |
大原,荻野,原,矢田部 | 60歳代の高齢者が描く人生の見通し-ナラティブスロープを用いた予測法の開発 | インタビュー |
17期生 (15年3月卒) |
大亀,岡崎,上﨑,亀山,友澤 | 回復期リハビリテーション病棟の作業療法における目標設定の実態調査 | アンケート |
18期生 (16年3月卒) |
石田,河野,児玉,山師 | 中山間地域と都市部の高齢者における環境因子が生きがいに与える影響 | アンケート |
19期生 (17年3月卒) |
上山,田村,廣江,村川 | 軽度要介護高齢者の生活環境が精神的健康に及ぼす影響 | アンケート |
20期生 (18年3月卒) |
横井,與田,和氣 | 要介護等高齢者の主介護者における心理社会的側面が介護負担感に与える影響 | アンケート |
21期生 (19年3月卒) |
長谷川,八田,藤井,真鍋 | 軽度認知障害をもつ人の生きがいが変化するプロセスの検討 | インタビュー |
22期生 (20年3月卒) |
今住,弘中,渡邊 | 軽度認知障害を予測するためのFAIのカットオフ値の検討 | アンケート |
23期生 (21年3月卒) |
上田,川原,宮田,村上 | 作業療法学生の日中の眠気と作業バランスの関係(20年3月まで指導) | アンケート 睡眠評価 |
パンフレット |
本学では平成20年度に文部科学省の「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に採択され,社会福祉学科の横山奈緒枝教授を推進責任者とした「医療・福祉領域の連携スキル学習プログラム」に平成22年度まで取り組みました.(→リンク).
このプログラムは,社会福祉・看護・作業療法・理学療法の専門職養成課程において,学科の枠を越えた合同演習の場を設けて連携スキル学習プログラムを導入し,学生の連携力強化を促すものです.籔脇准教授は教育GPの推進メンバーであった経験を生かし,平成23年度から必修カリキュラムのキャリア開発Ⅱ内で行われるようになった合同演習の運営に関わっています.
合同演習の一場面 | 教育GP推進メンバー会議 |
当研究室では,籔脇准教授が地元高梁市の成羽デイサービスセンターや吉備中央町の障がい者支援施設吉備高原清和荘を定期的に訪問し,高齢者・障がい者に対する作業療法(グループワーク,機能訓練,生活指導等)を展開しています.必要に応じて,職員に対する情報提供や講義も行っています.
また,これらの施設は学部教育にも活用され,作業ニーズ評価実習やデータ収集を通して,学生と利用者の交流の場ともなっています.
成羽デイサービスセンターでの指導
Copyright © Kenji Yabuwaki. All Rights Reserved.